祖師谷だより

武蔵野の外れ、仙川のほとりに棲む日々

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百島、海ほたる


 百島と書いて「ももしま」と呼ぶ、
 小さな島が瀬戸内海の千々に浮かぶ島々の合間に、
 くるまるようにして浮かんでいます。

 ひっそりとした佇まいもあって、
 百島に近い妻の実家の人たちでも、
 島のことを知らない人が珍しくないようです。

 その百島で海ほたるが見えることを、
 島のホームページで知り、
 家族で出かけることにしました。

 常石港からフェリーに乗り、
 対岸の百島まで10分余りの航海。



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 福田港に着くと、
 細身でよく日に灼けた男性が私たちを迎えてくれました。
 海ほたるはカヤックで見ることになっているので、
 島の反対側の海岸まで向かうとのこと。
 促せるままに道を歩くと、
 年季の入った軽トラックの前で男性は止まり、
 荷台に乗るように私たちに呼びかけました。
 4人で膝を付け合わせるように荷台に収まると、
 軽トラックは島を風を切って進み始めました。
 平屋建ての家や畑が、
 細い路地に沿って視界の遠くへ飛び去っていきます。
 時々上下に大きく飛び跳ねる車体につかまりながら、
 ちょっとした冒険気分を味わいました。

 港に着くと、2人艇のカヤックに乗り、
 瀬戸内の海に繰り出します。
 風もなく、波もなく、
 湖のように穏やかな海の上を、
 カヤックは滑っていきます。
 時折、あらぬ方向で水がはねる音がして、
 トビウオが一瞬、空中を飛び跳ねる姿を目にしました。

 遠く、四国を望みながら、
 夕日は島々の合間に沈んでいきます。



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 やがて暮れなずみ、
 島影にカヤックを進めて、暗くなり始めた海面に目を凝らすと、
 ほら、
 小さなぼんぼりのような光が、
 海中で青白くともり出ししました。
 一つ、二つ、三つ。
 はい、息をしてえ、
 男性に言われて息を詰めてみていた自分にはっと気がつきました。
 波をこぐパドルに沿って、
 夜光虫が青い光を放って後ろに流れていきます。

 浜に上がり、
 海水を手に握ると、
 海ほたるが青く灯ります。



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 海ほたるはプランクトンではなく、
 甲虫でエビやカニの仲間。
 秋や冬でもその姿を見ることができるそうです。

 ガイドを務めてくれた男性は、
 数年前に横浜から百島に移住し、
 やはり僻地医療を志して島に移住した医師とともに、
 診療所を営んでいるそうです。
 約7割が高齢者で、
 年々人口が減っていく過疎の島。
 しかし、居酒屋が出来たり、パン屋が出来たり、
 島に移住してくる人もちらほらいるそうです。
 初めは個人的に楽しんでいたカヤックでしたが、
 こんなに素晴らしい自然を独り占めしておく必要はないと思い、
 海ほたるツアーを始めたのとのことです。

 帰りはフェリーの最終便が出た後なので、
 海上タクシーを頼んで常石港まで送ってもらいました。
 小さな漁船をイメージしていたのですが、
 予想に反して立派なクルーザーで、
 思いがけず少しリッチな気分を味わいました。

 翌日、しまなみ海道にドライブに出かけると、
 塩で有名な伯方島を訪れ、
 展望台から瀬戸内海を望めば、
 前日の鏡のような海とは打って変わって、
 島影に沿って川のように流れる潮に乗り、
 大型船が木の葉のように流される様に目を見張りました。



 IMG_0302_convert_20180826115947.jpg



 昔の人たちが潮待ちをして、
 瀬戸内海を東へ西へと渡っていた様子が目に浮かぶようです。
 山と海と空とともにある暮らし。
 瀬戸内にはまだ記憶とならずに、
 今にその息吹を感じることができます。



 
 

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街の移ろいと身辺を彩る音楽について、そぞろに綴ります。

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